2021.06.18
物語を読むにあたって、理解を深めるために外せないのが、『心情理解』です。
しかし、長文問題は、画面で読みづらい、1問あたりの時間が計りづらいなど、eラーニングのデメリットが目立ちます。eラーニングで手軽に心情理解のトレーニングをさせられないでしょうか。
そこで、心情理解に必要な要素を2つに分けて考えました。
『語彙』と、『投影された感情の読み取り』です。
前者は単純に、『感情を表す言葉』を知っているかどうかです。
例1:「メロスは激怒した。」(引用:太宰治『走れメロス』)
これなら小学生でも、メロスが「非常に怒っている」とわかるでしょう。
例2:「許生員は我知らず、忸怩と顔を赤らめた。」(引用:李孝石「蕎麦の花の頃」)
こちらはどうでしょうか。忸怩(じくじ)は『深く恥じ入る』という意味です。
意味を知らなければ「顔を赤らめた」理由を、前後から推測しなければならず、間違えれば全体に影響しかねません。
この場合は、難読表現の語彙力を増やすことが、心情理解のカギになります。
後者は、次のような例です。
例3:「おやじが大きな眼をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴やつがあるかと云ったから」(引用:夏目漱石『坊ちゃん』)
「大きな眼」は、「目を見張る」という慣用表現が象徴するように、「驚き」の感情を「表情(目)」に投影しているといえます。
しかし、本当にそれだけでしょうか。「大きな眼をして」という表現には、「驚き」だけでなく仁王様のような「怒り」や「畏怖」といった感情が入り混じっていませんか?
これが、「おやじが驚いて~」という表現だと、情緒や奥深さが失われると思いませんか?
作家は、複雑な感情を物事や行動、表情など様々なものに投影して表現します。そうして、いかに文章の中に個性と奥深さを生み出すか苦心しているのです。
何気ない「天気」や「光の陰影」、果ては「指先の動き」でさえも、複雑な感情を表すピースになっていることがあるのです。
この場合のカギは、投影したピースを拾えるかです。そこで、様々なピースが表す感情を単純化し、パターン化させるトレーニングを考えました。
複雑な感情を「ポジティブ」「ネガティブ」、「喜(=楽)」「怒」「哀」などに単純化し、パターン化させることで、人物関係や込められた感情を拾いやすくできるのではないか。
弊社の「まなブリッジ!ドリル」では高校(文学国語)には、難読表現や表現の分類を取り入れました。
よく心情理解は「共感して」や「人物になりきって」などと教えられますが、個人の感性の振れ幅が大きいように感じます。個別指導の難しいeラーニングでは、それを抑える工夫が必要なのだと感じています。
Written by Y.Nakai
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