2022.09.15

ウェビナーの現在とこれから

「EdTech/eラーニングの最前線を考える」。最終回は、「ウェビナー」(オンラインセミナー)です。長期化するコロナ禍によって、ウェビナーは広く普及しました。ウェビナーはただ講義や講演をそのまま配信するに留まらず、様々な機能が追加されてきており、利便性が日進月歩で向上しています。例えば、グループ分けできるブレイクアウトルーム機能や、投票・アンケート機能等も充実してきています。また、バーチャル背景やアバターの適用で、プライバシーに配慮できるようになりました。2022年8月には、Zoomが音声をリアルタイム翻訳して字幕表示する機能をリリース。これにより国際的なコミュニケーションの円滑化が期待されます。さらには受講者の出退席のタイミング等のデータを取得してウェビナーを分析する、レポート作成機能等も充実してきています。 

一方で、問題点も聞こえてきています。まず何より、ウェビナー中に講師が受講者の状況や反応を把握することが困難な点です。受講者がカメラと音声入力を共にオフにしている場合等は、全く別のことをしていても分かりませんので、講師が不安になることも少なくないでしょう。また、その集中度や内容理解の程度を確認することも困難です。「オンラインでのプレゼンはリアルとは完全に別物」「聴衆の反応を見ながら説明を変更することができない」という、教員経験のある弊社社員のコメントが印象的でした。そこには、受講者に必要な説明が不足してしまうこと、そして臨機応変に話す能力の成長や、受講者との活発なインタラクションがもたらす「場の盛り上がり」等が阻害されてしまうことが示唆されているようです。 

受講者の視点からは、質問のしづらさや人間関係の築きにくさといった課題が挙げられています。オンラインでは何気なく講師(教員)や受講者(友人・クラスメート)と話す機会が生まれにくく、前回のコラムにあるコミュニケーションに関わる課題があります。また、動画の倍速再生機能の普及やショート動画の隆盛等によるためか、長時間の講義に対する集中力の不足・低下も懸念されています。 

これらに対して、前者については受講者の視線のトラッキングや脳波の測定等を用いるラーニングアナリティクス領域の研究の更なる進展による解決が試みられています。後者についてはメタバースにおけるアバターを用いたコミュニケーション等が検討されています。これらを掛け合わせた形のウェビナーが、将来的に実現するのでしょうか。例えば受講者が居眠りしたらそのアバターも居眠りして注意されるといった形で、リアルでできたことを全てできるようにするだけでなく、「代返」やカンニング等の不正行為を厳しくブロックする等、リアルの場にあった問題すら解決してしまうようなシステムが登場したら、面白いですね。そのようなウェビナー、授業システムの登場に期待したいと思います。

Written by H.Owa


学習ログを取ることで、弱点分析や学習態度を分析する
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