2022.12.01
12月から1月にかけてのコラムのテーマは、「教育現場の『ホワイト化』を目指す施策を考える」です。「ブラック」であると言われて久しい、学校教育の現場。現在、文部科学省は2022年度の教員勤務実態調査を行っていますが、前回(2016年)の調査結果からは、小学校教員の約3割・中学校教員の約6割の時間外勤務が月平均で80時間以上となっていること等が明らかになりました。このような教育現場のブラック状態の継続は、教員個人の健康状態やQOLの低下、教育の質の低下や教員不足、最終的にはよりよい社会を創り上げていくための人材不足や日本の経済・国際的な競争力等にも悪影響を及ぼすものと考えられます。
変化の激しい時代に対応できる子どもを育成するためのカリキュラムや教材の充実は、それを実行して伝える現場の教員が過労で機能不全に陥っていては、効果が期待できないばかりかブラック化を進行させる原因となり得るでしょう。多くの生徒を抱え、休憩時間も満足に取れず奔走する教員に多くの対応を求めるのは酷であり、無謀とも考えられます。子ども・教員・社会の未来のために、教育現場の「ホワイト化」は危機意識をもって社会全体で取り組むべき急務と言えます。
この「ホワイト化」を実現するためには、どうすればいいでしょうか。「税金を大量に投入し、教育の人員を増やす。以上!」等と言いたいところですが、現在、文部科学省は働き方改革のための様々な取り組みを推進しており、いわゆる「サービス残業」を生む一因である「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」の見直しや勤務時間管理の適正化・業務効率化、外部人材の登用等が進められています。
ホワイトな環境を構築する上で、ICT活用は欠かせません。例えば、文部科学省の「改訂版 全国の学校における働き方改革事例集(令和4年2月)」によると、保護者から学校への連絡をメールやWebアンケートに変更すると、担任一人あたり年間で43時間の削減、欠席連絡や検温報告をWebアンケートにすると年間33.3時間の削減になると言います。教員が電話内容を聞き取ってメモする必要もなくデータ化し、休日や夜間でも受付が可能となります。このように、できるところはどんどんシステム化し、作業を省略・効率化していくことは有効です。
教育現場の現状を踏まえると、家庭は元より子ども達を取り巻く社会全体で学校に依存してきた部分を見直し、担える教育・役割分担について再考し、行動していくことも必要ではないでしょうか。ナスピアでは、授業準備の負担を軽減する教材の作成や記述式採点自動化の精度向上の検討等を進めていますが、更に有用な教育システム・教材を実現していきたいと考えています。
Written by H.Owa