2023.02.01
前回までのテーマ「教育のホワイト化」はいかがでしたか?
今回からしばらくの間は、コラムニスト個別のテーマをお送りします。
今回は、「文学的な表現力」をデジタルの分野で育成できるか、がテーマです。
さて、「文学表現」というものは、古典から人類が積み上げてきた知識です。
ある者は光彩を、ある者は肉体の動きを描写し、読者に伝えてきました。これは、先のコラムでも触れましたね。存在する語彙が限られている以上、造語しない限り、表現は「組合せ」に過ぎません。
では、「表現力」はどうすれば、育成できるのでしょうか。2つ、取り上げてみましょう。
ひとつは、先人の積み上げてきた技術をインプットすることです。先人が心情を表現する際に使った技法や台詞回しを学び、自分の中で昇華することで、表現力の技量を養います。
もうひとつは、「感受性」を養うこと…自身がたくさんの体験を通して、「自分がどう感じたか」を積み上げることです。言葉にするための「自身の体験」を根底に作るためのものです。
今回は特に、1つめの観点を深堀りしたいと思います。
「良作をたくさん読め」…という結論が手っ取り早いですが、もう少し別の、個人的な考えを書きたいと思います。
それは、デジタルならではの方法で「心情表現を分析する」のに、「プルチックの感情の輪」を活用できないか、という考えです。
これは、人間の感情を「喜び・信頼・恐れ・驚き・悲しみ・嫌悪・怒り・期待」の8つの基本感情に則って定義した「立体モデル」です。
このモデルでは、複雑な感情をまるで光の三原色のように合成して表しているのが、お判りでしょうか。私はこのモデルを見たとき、Microsoft Power Pointの「色変更機能」や「スポイト」機能を思い浮かべました。
もしもRGBのように、8つの基本感情の数値を入力すれば、その数値の組み合わせに近い、かつての文豪が行った「表現」を辞書のように引用してくれる。
とある文章の一部をドラッグ操作で指定して、「スポイト」のように「感情」を数値化できれば、表現者の辞書としても、表現力の育成としても使えるのではないか…!これは、そんな展望です。
私は、これが夢物語だとは考えていません。昨今のAIの進歩は目覚ましく、絵を作成させることができるようにすらなりました。
まだ、AIが完成度の高い文学を執筆することは、できていません。しかし、そう遠くない未来に、AIを用いて、「文学表現の感情」を数値化する技術は確立すると考えています。
(本当に上記のツールを作ろうと思うと、著作権の問題が大きく立ちはだかる、というのはさておき)
実は、今回のコラムは「非認知能力シリーズ」でボツとなった原稿です。というのも、「表現力」は「非認知能力」ではなかったからです。
認知的スキルには、「基本的認知能力」「獲得された知識」「外挿された知識」などが含まれます。
私がコラム冒頭に記載した、「文学表現」というものは、古典から人類が積み上げてきた知識という一文が、なにより「表現力」が「認知的スキル」であることを物語っていた、というオチでした。
Written by Y.Nakai
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