2024.09.02

eラーニングの強みを活かせる作問技術 ―BASIC.StudyCampの工夫と視点(2)―

前回のコラムでは、「BASIC.StudyCamp」の教材制作について、「eラーニングの強みを活かせる作問」のテクニックを紹介しました。 
今回は反対に「泣き所」ともいえる「記述問題のeラーニング化」にあたっての工夫についてお話します。 

正直、「記述問題」「小論文」のような、「明確な正解が存在しない問題」は、現状eラーニング向きとはいえません。 
もちろん、機械的な正誤判定が難しいという技術的な障害が最大の理由ですが、現代におけるAI技術の発展は目覚ましく、AIを使用して記述式採点を行う商品の中には、すでに実用段階のものもあります。 
かくいう弊社でも独自に開発し、BASIC.StudyCampで使用した実績もありますが、残念ながらコアとなるAI側の提供が終了してしまい、利用を停止しています。 

ただし、このような商品を使ったとしても、AIの性質上「データを学習させて精度を高める」過程を必ず伴います。 
規模にもよりますが、たった数問の為に利用するには、まだ労力・コストとリターンが釣り合わない点も、向いていない理由といえるでしょう。 
(数万人単位で利用する全国模試のようなものなら釣り合いも取れるのでしょうが) 

しかし、「記述」…文章化する能力は、非常に重要です。BASIC.StudyCamp(&前身のサービス)でも、「書く力」を大テーマの一つとして扱い、関連する出題を行っています。 
開発当時は2000年代後半で、AIはまだまだ発展途上。どうにか当時の技術で「書く力」を鍛える方法はないものか、と(当時の社員が)悩みに悩んで生まれた問題形式があります。 
それが「記述複合形式」と呼んでいるものです。 

特徴は1問を2回に分けて出題する点で、1回目は、テーマとなる画像や動画と「メモ領域」のみを出題。2回目で、「自身が書いたメモ」と問題&選択肢を表示します。

 記述複合形式のキャプチャ

この形式がユニークなのは、1回目の段階では「何を訊かれるのかわからない」ところで、出題されたテーマについて、解答者は漠然と、メモするポイント・量・クオリティを判断しなければなりません。 
この点は、大学の講義や社会に出た後のシミュレーションとしても有用です。 

また、メモの内容は加点や減点の対象にはなりませんが、当然データは取得しており、解析することができます。重要だと思ったポイントに限定する、薄く広くメモする…etc、解答者の性格が表れる点も魅力の問題形式だといえます。 

記述複合形式の問題は、開発から十数年経った現在も毎年作成し、BASIC.StudyCampの中で使用しています。 
難易度の調整が難しく、作問の技量が問われるといった面もありますが、間違いなくナスピアの中で受け継がれる「作問の工夫と視点」の結晶の一つだといえるでしょう。

Written by Y.Nakai


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