2021.06.04
「ICT導入で良い授業になる」
これが今、あちこちで蔓延している大きな勘違いです。各教育機関はこの認識を改めなければなりません。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「GIGAスクール構想」が一気に加速しました。文部科学省は、小中学校の児童生徒への1人1台の学習者用コンピュータの配布と校内LANの整備などを通して、学習意欲の向上や多様な学習を目指しています。ICT活用教育後進国であった日本に、こういった動きがあるのは大変素晴らしいことです。
ですが渦中にいる先生は、この動きをどう捉えているのでしょうか。
「オンライン授業ができるようになった」
「新しい授業の形ができた」
「児童生徒がとても楽しんでいる」
そういった声を聞く反面
「タブレットをもらったが使い方がわからない」
「そもそも校内設備がまったく整っていない」
「何かよくわからないけど、管理職からとにかく使えと言われている」
という声を聞いている先生も少なからずいるでしょう。
緊急事態宣言の影響でいきなりその重要性が高まり、てんやわんやな状態の学校もかなりあるようです。またその効果に懐疑的な先生も多いでしょう。
これは、「ICT=よくわからないけど何となく良いもの」 という曖昧な認識だけが一人歩きしていることで
「ICT導入=良い授業になる」といった幻想が蔓延しているに他なりません。
そもそも良い授業とはどういうものでしょう。
一言で言えば「わかった!」「できた!」という達成感を得られる授業といえます。児童生徒が主体的に学び、その中で知識技能の向上を図れるものが良い授業です。そのために学校の先生は、よりわかりやすく、楽しく、向上心を持って活動できるような授業展開を日夜図っています。
ですが、果たしてICTを導入しただけで上記のような良い授業を行うことができるのでしょうか。答えは当然NOです。
良い授業を作るのは「ICT」ではなく、「教材研究」なのです。教材研究が足りていなければ、いかにICTを使ったところで、良い授業にはなりません。児童生徒に「どういった力をつけたいか」という狙いを明確にし、その上でICTをどういった場面でどのように使うべきか考えることが重要なのです。もちろん、その使い方に指導書などありませんから、効果的なやり方を何度も試す必要があります。ICTは魔法ではないのです。
文部科学省も教育委員会も、その理解が圧倒的に足りていないように思われます。機械を渡して後は学校現場にお任せでは何も変わりませんし、かえって混乱を招くだけです。関係者が一丸となり、効果的な活用法を模索していくことで、初めて日本の教育ICT化は進むのです。
教育に関わる全員が、
「良い授業になるからICTを使う」
ではなく
「良い授業にするためにICTの使い方を考える」
という認識を持つことが求められます。
現在、教育は大きな岐路に立たされています。今の環境下における「最良の教育」とは何か。全員でこの議題を考えていかねばなりません。
Written by S.Fujiwara