2021.07.09

「この勉強、将来何の役に立つの?」

30年前に高校教員をやっていた時に、時々生徒からかけられた言葉です。まぁ、筆者も高校生の時には同じことや似たようなことを言っていたので、勉強したくない人はこういうことを言うものです。

ですが、教える側としては意味があることをちゃんと伝えなければいけません。筆者の場合は地学でしたが、物理や数学も試験前には質問に答えていましたから、やはりすべての教科が必要であることを納得してもらう必要があったわけです。

というわけで作ったのが「まなブリッジ!」です。「まなび」と「社会」を繋ぐ(ブリッジの)役割を持ったものという意味です。
そう、それぞれの教科・科目の単元で学ぶ内容が、社会のどういう所で活かされているのかを考えようというものです。

朝日学生新聞社に協力をお願いし、「朝日小学生新聞」「朝日中高生新聞(旧朝日中学生ウィークリー)」の記事をご提供いただく約束を取り付けました。
そして学校で学習する単元の一覧を作成した上で、それぞれに適合する記事を10年分の新聞からピックアップして作成するという、膨大な手間をかけて作り上げました。
完成したコンテンツは小学校算数(4~6年生)、中学校数学、中学校理科、中学校社会の4つです。
例えば、「バナナの皮がすべりやすいことを実証した」というイグ・ノーベル賞の記事は、中学校理科・エネルギー分野の摩擦力の単元で利用。
「最も高低差の激しい路線」の話は、中学校数学の正負の数の単元で使用、といった感じです。

他にも、小学校向けには「総合学習」というものを用意しました。ここには「調べ学習」に対応した「新聞作成」、そして討論型授業を行うためのコンテンツも用意しました。

このようにして授業と世の中を繋ぐコンテンツを制作してきたわけですが、昨年度は経済産業省「未来の教室」事業で公募された「STEAM Library」にも応募。そして
『「杜のスタジアム」にみる次世代都市づくり』
というコンテンツもリリースしました。「都市設計」という切り口で
数学科(様々な計算系)、理科(物理:強度計算、化学:コンクリートの化学組成、生物:カーボン・ニュートラル、壁面緑化など、地学:地震・水害と防災)、社会科(歴史:都市の発展、地理:地形、公共・公民:産業、法律)、保健体育科(都市におけるスポーツ)、芸術科(文化財の保全)、家庭科(バリアフリー、ユニバーサルデザイン)と、欲張りなコンテンツに仕上げました。

様々な学習内容が、教科・科目の枠を越えて関連していることを伝えることこそが、
「この勉強、将来何の役に立つの?」
という問いに対する究極の解答なのだと考えています。

ちなみに個人的には
「なりたい自分になるため。なりたい自分になれないことを避けるため」
という言葉も気に入っていますけどね。

Written by T.T.Yamada


日々の学習と社会を繋げるデジタル教材。
小さな気付きを好奇心に変え、学ぶ意欲を創造する

経済産業省が展開する「未来の教室」事業
STEAM Library