2023.05.01
2007年のことですから、もう16年も前のことになります。当時、教育実習に行く大学生を支援するためにオンラインで指導案を作成できるシステムの開発を行いました。先行していたのは滋賀大学の指導案オーサリングシステム「TeaPoT」 です。
しかし別の大学から
「学生は先輩の指導案を写して、ちょっとだけアレンジして提出するというパターンが多い。それでは教材に合わせた指導内容になっているのかが分からないから、何とかしたい」
というオーダーをいただきました。TeaPoTはワープロ的に使えましたが、教材と活動内容の整合性チェックまでは行っていませんでした。
そこで開発したのが「指導案作成支援システム」です。綺麗な指導案を作るというよりも、指導案の骨子を作成して、内容をチェックすることに重きを置きました。教材も指導内容も学習指導要領に定義された「スキル」をアップさせるために存在するという前提に立っています。
ここでは国語を中心に紹介しましょう。国語では「聴く」「話す」「読む」「書く」「情景描写」「心象理解」「言語事項(語彙)」「要約」の8スキルが定義されています。すべての教材にはこのうちのどれに対応しているのかが示されています。ですからそれに即した活動を行うのが良いわけです。
そのため、上記のシステムでは「教材」を選択した段階で、どのスキルを伸ばそうとしているのかがわかるようにデータの登録をしました。教材も事前に登録しておき、選択式で選ぶようにしました。
その上で、「どういったスキルを伸ばしたいのか」を教育実習生に考えさせ、8つのスキルのどれをどの程度伸ばしたいのかを合計が100%になるように「指導感」として入力させます。
そこからさらに1時間のタイムテーブルを登録させます。そこにはどういった活動を行い、評価規準は何かを入力できるようにしています。ただし自由に書かれてしまうと、それがどのスキルのための活動かを判別するのが難しいため工夫をしました。
入力の方法には次のような考え方を入れました。まず「スキル」にはそれを代表するような「基本活動」があるはずです。例えば「聴く」スキルを上げるための活動には「先生が読み上げるのを聴く」「指名された児童・生徒が読むのを聴く」などがありますが、どちらにも「聴く」という活動が入っています。この「聴く」を「基本活動」とし、「先生が読み上げるのを聴く」などは「基本活動」を拡張した「拡張活動」と位置付けました。これはプログラム開発の際に利用するsuper classとclassの関係と同じです。すると実習生は拡張活動をして登録していけば、その活動が含む基本活動からどのスキル向けの活動かをシステムは判定できるわけです。
こうして「教材」「指導感」「活動」の入力内容をチェックしていました。すでに動作していないのが残念です。学習指導要領が更新された今こそ復活させるべき時かも知れませんね。
Written by T.T.Yamada