2020.08.27
近年STEMまたはSTEAM(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)教育の重要性が叫ばれるようになってきました。これはArtを含んだ場合にはリベラルアーツの範囲そのままなのですが、それでもあえて強調しているのは、STEMに当てはまる理工系の部分の重要性を再認識させる意図があると考えられます。
では、この中でMにあたる数学(算数を含む)は、どの様なシーンで必要なのでしょうか。すぐに出てくる理由としては
「買い物をするとき計算できないと困る」
ですが、正直、そんなものはレジに任せてしまえば良いという言い方もできます。計算手順さえ分かっているのであれば、電卓で計算しても構いません。
ではどういうところで重要というと、数学を学ぶ重要な目的に
「抽象化・抽象概念の獲得」
があります。これは
「リンゴが1つあります。ここにもう1つリンゴを持ってくると、リンゴは合わせていくつになりますか」
という具体的な事例を
「1+1=2」
と抽象化するというものです。こういう数式にすることで、1はリンゴでもミカンでも車でもテレビでも、何でも扱えるようになります。この抽象化ができているかどうかが分数や小数を学ぶ際に重要になります。抽象概念を扱うことができなければ、小数・分数の加減算は無理矢理何とかしたとしても、乗除算は理解しがたいものとなります。
当然、これらをベースにする百分率や、それらを可視化したグラフなども理解が難しくなってしまいます。グラフを読む能力は理科や社会でも重要ですので、他の教科の理解度にも影響してしまうのです。
そして、もう一つ重要な点があります。こうやって抽象化されたものから、
「1+1=2に当てはめられる実例を挙げなさい」
という形で再度具体化することです。このやりとりを行う事で、抽象化された概念も頭の中でイメージがしやすくなります。これができていると、例えば分数を見た時に、全体のどれくらいなのかをイメージしやすくなりますし、これが長ずれば2次関数を見た時に、頭の中にグラフが浮かびやすくなります。
もちろんこれは単純に数式に対してだけではありません。例えばグラフを見た時に、それを実際のモノとしてイメージする能力になります。そしてそれはわかりやすく説明するための能力にも繋がります。例えば、「インフォグラフィックス」です。
図:インフォグラフィックスによる人体の水分量
これは情報をわかりやすいイメージとして図示することで、伝わりやすくする技術です。文字とグラフで全てを表現しなくても、図の様に表せば文字は最小限で済みます。抽象概念を具体化する技術は、こういう所で活かされます。そしてそれは算数・数学が大きな役割を果たすのです。
Written by T.T.Yamada
日々の学習と社会を繋げるデジタル教材。
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