2021.02.28
「とりあえずAI(人工知能)」
という流れが増えて来ていますが、今回は
「なんでもかんでもAIに任せれば良いというわけではない」
というお話しをします。
教育分野はこれまでデータの取得・分析という、ビッグデータ利用がほとんど行われてこなかった分野です。学校現場でも、
「成績データは個人情報なので、学年が終われば廃棄」
という処理が行われてきました。実は紙の書類で保存するため、場所を取るという理由もありました。つまり「セキュリティ対策も含めたデジタル化」が進んでいなかった、と言い換えることもできます。
しかし2018年頃から、本格的に教育ビッグデータの活用が始まりました。企業向けのeラーニングから始まり、人事評価や社員のスキル状態を可視化しました。現在では定期的にアンケートに答えることで、現在の心理状態を把握し、社員のパフォーマンスとの関連や、退職に繋がるサインの発見などとしても使われています。
次に使われ始めたのが学習塾業界です。特に大手はオンラインでの学習コンテンツを提供していますから、そのアクセス履歴を分析し、学習サポートに使っています。
また、これまでの入試問題を分析することで、今後の問題を予想しようという試みも行われているようです。ただし、今年度から教科横断型の試験問題に入れ替わりつつありますので、これまでの試験問題の分析にどの程度意味があるのかは不明です。
ところで、AIの活用には問題が一つあると考えています。データの解釈をすべてAIに任せるというのは問題があるということに、気が付いていない人が多いのではないかと危惧しているのです。
「相関関係と因果関係」の回でも書きましたが、分析結果では相関関係のように見えるものが出てくることがあります。たまたま相関関係や逆相関関係があるように見えるものもあれば、原因と結果の関係を持つ因果関係になっているものもあります。ですので、AIにはデータの処理は任せることはできても、その解釈は人間が行わなければいけません。もっと言えば、どの様なデータを取れば、どんな相関関係が出そうかをしっかりと考えた上でデータ収集を行う事が重要です。そもそも、何のためにデータを分析するのか?ということです。
教育分野でのデータ活用はこれからどんどん進んで行くと考えています。ですが、安易になんでもかんでもデータを取得してAIに分析を任せるのは危険です。その解釈に振り回される可能性があるのです。場合によってはExcelで分析するだけでも十分な場合があります。
ある程度は先に仮説を立てて、その結果がしっかりとAIの分析で出てくるのかどうかを確認しましょう。きちんと結果が出ているようであれば、その分析は信頼できるものと考えられます。その上で想定していなかった分析結果の解釈を考えると良いでしょう。想像もしていなかった関係があぶり出される可能性もあります。
Written by T.T.Yamada
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