2021.04.09
前回はSCORMとLTIという2つの国際規格について紹介しました。今回は新しい規格として普及が進みつつあるxAPIと、それを活用するcmi5について紹介します。
受講者がeラーニングで何かの学習をした場合、その学習ログはLMS内のデータベースに保管されるのが一般的です。問題は、LMS毎にデータベースの設計が異なっているため、当然、データフォーマットも千差万別です。しかしこれだと、LMSが変わる度に、以前のデータとの連続性が失われてしまいます。SCORMでは一定レベルのデータフォーマットの共通化を行っていましたが、それは十分なものではありませんでした。ですからLMSによって、多くの学習ログを保持しているものから、合格/不合格程度の情報しか持たないものまで存在していたのです。
さすがにこれだとよろしくないと言うことで、データの持ち方を共通化しようと制定されたのがxAPI(Experience API)です。これによって、受講者の教育経験である学習ログを、どのLMSで学習したものであっても同じフォーマットで保存できるようにしたのです。ただしフォーマットが同じだけで、「何を書き込むか」を統一しないとダメなのですが…ちなみに現在のヴァージョンは1.0.3です。
なお、この学習ログはLRS(Learning Record Store)というシステムに保管されることとなります。LRSはLMS内にあっても構いませんし、LMSとは独立して機能させていても構いません。
弊社のe-GOALをxAPI対応させるにあたっては、Learning LockerというLRSへの格納を考えています。これはxAPI対応のLRSを自前で用意するのは開発コスト上の問題から得策ではないと考えたためです。Learning LockerはOSS(オープンソース・ソフトウェア)ですし、イギリスのJISC(30以上の大学が集まっておこなっているプロジェクト)でも利用されていますので、実績も十分だと判断できます。
また、同じ様な規格にCaliperもあります。一時期は統合しようという話もあったようですが、今のところ進んではいないようです。
さて、こうしてデータの保存については共通性が担保できるようになる道筋ができたわけですが、コンテンツなどを含む学習管理機能も整理する必要があります。SCORMでも構わないと言えば構わないのですが、やはりシステムとコンテンツが同じドメインでなければ動かないのは、管理上大変面倒です。そのために登場したのがcmi5です。このcmi5はxAPI 規格の上での学習管理機能を規定しています。この規格を利用することで、SCORMよりももっと柔軟に学習環境の構築を行えるようになります。
例えば、LMSから外部ドメインに設置した学習コンテンツを呼び出すことができます。つまりLTIと似たようなことができるわけです。SCORMのようにLMSと同じサーバーにコンテンツを格納しなければいけないという呪縛から解放されるため、日本では今後cmi5対応のLMSが増える可能性があります。すでにリリースされているxAPI/cmi5対応、そしてLRSにも対応しているLMSとしてはGINGER APP社のものがあります。ご参考ください。
Written by T.T.Yamada
学習ログを取ることで、弱点分析や学習態度を分析する
eラーニングシステム。PC、タブレット、スマホに対応