2021.05.14
NHK高校講座に「ロンリのちから」というのがあったのをご存じでしょうか。この番組が最初に取り上げる話題こそ「三段論法」なのです。しかしこの三段論法、気をつけないと引っかかってしまうようなトリックが隠されている場合があります。
まず、単純な三段論法から見てみましょう。
「鳥は羽を持っている」(大前提)
「スズメは鳥である」(小前提)
「よって、スズメは羽を持っている」(結論)
大前提よりも狭い範囲を小前提とすることが、三段論法では重要です。コウモリも羽を持っていますが、鳥ではありません。ですから、小前提の作り方には注意が必要です。
ところが三段論法っぽいけれども、三段論法になっていない主張があちこちで見られます。
例えばこういうのはいかがでしょう。
「高速道路が通っているため、この街は発展した」
「A氏が当選して、この街に高速道路を通した」
「A氏の当選がこの街を発展させた」
というものです。1つ目と2つ目の文章はそれぞれ独立していて、範囲の大小の関係がありません。もちろんこれが当てはまる街があるのは事実ですが、三段論法にはなっていないのです。
ですので、政治家が高速道路や新幹線などのインフラを通すことで街を発展させようとするのは、必ずしも正しいとは限りません。
「この街が発展しないのは、高速道路が通っていないからです」
「Bが当選すれば高速道路を通します」
「街を発展させるために、Bを当選させましょう」
そもそも街の発展はインフラだけの問題でしょうか。発展には有力な産業も必要です。インフラが整えば産業が活性化するわけではありません。
こういう場合「前提を逆にし、疑問文にしてみる」ことがロジックの破綻を見破る方法として有効です。1つ目の条件でやってみると、こうなります。
「高速道路が通ればこの街は発展するのか?」
これならば、高速道路ができた未来を想定できます。高速道路が通った時、それを使って輸送できる何かがなければ、街は発展しないでしょう。今度は
「高速道路で輸送できる商品を生産する工場を誘致します」
という公約が出て来かねません。街の発展とはどういうものか、そしてそれには何が足りていないのかをしっかりと把握しなければ、公約に振り回されてしまいます。
おかしな論理には次のようなものもあります。
「ほとんどの日本人は、毎日、米を食べている」
「日本人の犯罪者も、毎日米を食べていた」
「よって、米を食べると犯罪者になる」
明らかにおかしな論理です。この場合、2つ目と3つ目を次のようにすると、正しくなります。
「日本人の中にも犯罪者はいる」
「よって、日本人の犯罪者は米を食べている」
ちなみに、このロジック、
「犯罪者の96%は、犯行前日にある食品を例外なく食べていた」
など、一部を伏せた状態で出されることもありますので注意してください。
フェイクにだまされないためにも、論理的思考を鍛えましょう。
Written by T.T.Yamada
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