2022.02.10

インストラクショナルデザイン その1(概要・企画)

今回から3回に分けて、教育を行う上で大変重要な「インストラクショナルデザイン」について説明します。専門の書籍も数多く出版されていますので、本コラムでは重要なポイントを紹介するに留めます。
インストラクショナルデザインをしっかり学ぶのであれば、お薦めは北大路書房から出版されているR.M.ガニェ他著の「インストラクショナルデザインの原理」です。

さてガニェは「学習」を
「行動に見ることができる学習者の特性や能力が変化する過程」
と定義しています。つまり教育であれ、研修であれ、学習者の特性や能力が何らかの変化をすることを期待しているわけです。もっと言えば学習者の特性や能力を
「どのように変化させるのか」
「どの程度変化させるのか」

を事前に設計しておく必要があるということです。

このうち
「どのように変化させるのか」
については様々な議論がなされている事と思います。この本でも最初は「ニーズ調査」を行うとされています。企業などではどのような研修が必要なのか?という疑問があります。企画を立てる側としては「ニーズ調査」でアンケートなどを活用しながら、
「そもそも求められているものは何か?」
を明確にしていきます。

学校現場では
「そもそも何故この内容を教える必要があるのか?」
でしょうか。教科教育法に立ち返り、教科書の内容を教えることが子ども達に何をもたらすのかを再度考えてみましょう。
その上で、教材や授業・研修方法の見直しも検討すると良いでしょう。

問題はもう一つの
「どの程度変化させるのか」
の方です。この視点が決定的に抜けているのが問題だと筆者は考えています。変化の度合いは
「変化量」=「学習後テストの成績」-「学習前テストの成績」
「変化率」=「学習後テストの成績」÷「学習前テストの成績」

などで計測が可能です。その際、
「どのようにテストを作るのか」
というテクニック論も重要ですが、
「どういうテストを行うべきなのか」
「変化量や変化率を大きくするような教材や授業方法とはどういうものなのか」

を綿密に設計しておく必要があります。

そのためには「学習者分析」「学習目標分析」などをしっかりと行う必要があります。企画では大変重要な項目です。学校教育現場で使われている学習指導案にはそこまでの内容は書かれていないことがほとんどです。それでは十分な変化をもたらすことができたのかがわかりません。

内容を設計し、授業・研修やテストを受けてもらい、学習者が想定通りの変化を示したかどうかを検証するというサイクルを回しましょう。示さなかった場合は授業が悪いのかテスト内容が悪いのかなどが検証できるようになっていなければなりません。
そして悪かった部分は再度設計し直して次のサイクルを回すわけです。

このように「インストラクショナルデザイン」では「検証可能性」を重要視しています。

Written by T.T.Yamada


日々の学習と社会を繋げるデジタル教材。
小さな気付きを好奇心に変え、学ぶ意欲を創造する


学習ログを取ることで、弱点分析や学習態度を分析する
eラーニングシステム。PC、タブレット、スマホに対応